Vaccine Digest 第1号(2013年4月発行)

Vaccine Digestとは

「Vaccine Digest」はワクチンの専門会社であるジャパンワクチンが、話題のトピックや学術・行政の情報、日常の診療に役立つコツなどをお届けしている定期情報誌です。先生方のお役に立つ情報が満載ですので、ぜひご覧ください。
※諸般の都合により、一部掲載していない記事があります。

目次

  • 予防接種関連法規 Now!

    「予防接種法」改正の経緯と今後の展望

    川崎市健康安全研究所 所長 岡部信彦先生

  • Vaccine Topic

    ワクチンの「接種間隔」と「同時接種」

    国立病院機構 三重病院 院長 庵原俊昭先生

  • 日常診療Q&A

    ヒブワクチンの接種について

    千葉大学医学部附属病院 感染症管理治療部 (現 千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 准教授) 石和田稔彦先生

  • スペシャリスト Pick Up

    ワクチン接種への理解を深めるコミュニケーションの重要性

    埼玉県小児保健協会 会長 医療法人自然堂 峯小児科 理事長 峯眞人先生

  • 特別記事

    ワクチンの品質保証と安定供給に向けた取り組み

    アルフレッサ株式会社 常務執行役員 営業本部長 (現 取締役専務執行役員 営業本部長) 遠藤俊仁氏

予防接種関連法規 Now! 『予防接種法』改正の経緯と今後の展望 川崎市健康安全研究所 所長 岡部信彦先生

-まずは『予防接種法』の目的について教えてください。大きな目的は、子どもたち等を感染症から守るための『公衆衛生対策』と『予防接種による健康被害の迅速な救済』の2つです。

 予防接種の対象は主に子どもたちであり、次世代を担う子どもたちを感染症から守ることが『予防接種法』の最大の目的です。さらに予防接種を行うことにより、公衆衛生の向上および増進に寄与することも重要な目的です。
 『予防接種法』は法律であるため、政省令などを含み、対象ワクチンと、その接種時期や接種回数、接種間隔、接種時の注意事項などについて細かい制約がありますが、そのことによって多くの人たちが安心して接種を受けることができています。一方、法律による制約があるため、たとえば1日でも接種時期をはずれると、医学的理由ではなく法的理由によって定期接種とはみなされなくなることなどがあります。制約はメリットであると同時にデメリットである面も持っています。また、「予防接種法で定められた定期接種=無料」というイメージもあるようですが、予防接種法で定期接種を「無料」としているのではなく、自治体が住民サービスの一環として、必要な費用の全部または一部を負担しているという形になっています。実際には、国内のほとんどの地域で主な定期接種ワクチンは無料で受けることができます。

-過去に数回行われた法律の改正の経緯と背景について教えてください。感染症の流行状況やワクチンの進歩、社会情勢などに応じて法律の内容を見直し、適宜、時代にあった改正が行われています。

 予防接種に関連する法律は、かつて天然痘に対する『種痘法』しかありませんでした。第二次世界大戦後、当時国内で蔓延していた伝染病に対して強制力を持って対策を講じるため、1948年に『予防接種法』が制定されました。その後公衆衛生環境の向上、医療の発展、そして予防接種の定着などにより感染症は少なくなりましたが、一方確率としては稀であってもワクチン接種後の副反応の存在が問題になるようになり、これに対応して1976年に健康被害救済制度が導入されました。
 さらに1994年には社会の成熟に伴い、法律により予防接種を強制するのではなく、疾病とワクチンの効果について理解した上でそれぞれが接種を受けるべきであるとの考えから、予防接種は義務接種から勧奨接種へと移行され、集団接種は主に個人接種となり、併せて集団防衛の考え方から個人防衛の考え方に比重が移りました。さらに2001年には対象疾病を、従来の小児対象予防接種である「一類疾病」と、個人の発病予防と重症化防止に重点を置く「二類疾病」に類型化し、高齢者のインフルエンザ予防接種が二類の定期接種とされました。そして、2006年には『結核予防法』の廃止に伴い、対象疾病に結核(BCG)が組み込まれました。

-2013年の法律改正案作成にあたって重視されたのはどのようなことですか。いわゆるワクチン・ギャップの解消、そして導入数が増加した現状と法律との乖離解消、副反応を速やかに把握し、対応するためのデータ集積、予防接種施策を総合的かつ継続的に評価・検討する組織の構築などです。

 世界的には、「ワクチンで予防可能な疾病は予防接種で防いだ方がよい」という考え方が広く受け入れられています。しかし日本では、世界保健機関(WHO)が推奨しているワクチンの一部の導入が遅れたことや、導入されても定期接種になっていないことなど、世界のワクチン状況からの遅れ、いわゆる「ワクチン・ギャップ」があり、その解消が求められてきました。近年はこれを解消するために新たに導入されるワクチンが増加しましたが、一方今度はワクチンの種類が一気に増えたことによりタイトで複雑な接種スケジュールとなり、また接種の実際にあたっては法律との乖離現象などもみられるようになってきました。これらを解決するための法律改正案が国会で議論されています(2013年3月中旬現在)。
 BCG予防接種の定期接種期間が1歳までに延長し標準期間を5~8ヵ月とすること、ある疾患のために定められた期間に接種できなかった定期接種ワクチンについては回復後一定期間に定期接種として接種が行われることなどはすでに制度の改正が行われました。今回の予防接種改正法案が通過すれば、近年国家事業として導入されていたヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の3ワクチンが定期接種化されます。
 また、ワクチン接種後に生じた事象とワクチンとの因果関係を医学的に判断することは難しいことが多いのですが、今回の法改正では、ワクチン後に生じた一定の症状・事象などについての報告を医師に義務として求め、それらのデータを集積、解析し、定期的かつ速やかに専門家が評価を行い、必要があればこれもできるだけ速やかに対応できるようにすることとなっています。これによってワクチン接種後に生じた事象をできるだけ正確に評価し、必要なものについてはその後の速やかな救済措置につなげていくことなども期待されます。
 また厚生労働大臣は予防接種に関する基本的な計画を策定し、予防接種施策の立案にあたっては新たに厚生科学審議会に設置された予防接種・ワクチンに関する評価・検討組織に意見を聞かなければならないこととされ、この評価検討組織(厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会)は予防接種基本方針・政策部会研究開発及び生産・流通部会副反応検討部会などの部会で詳細を検討するとされています。

2013年 予防接種法改正案のポイント■	厚生労働大臣は、予防接種に関する基本的な計画を策定する■	3ワクチンの定期接種化「ヒトパピローマウイルス(HPV)」「インフルエンザ菌b型(ヒブ)」「小児用肺炎球菌」■	重大な副反応について医師に対する報告の義務化■	新たな機能を持った予防接種・ワクチンに関する評価・検討組織(厚生科学審議会に設置)

-今後、どのような変化がもたらされるのでしょうか。より科学的なエビデンスにより感染症を予防できる時代へ、一歩前進することを期待しています。

 今までの日本では、予防接種に関して何らかの問題が起こってはじめて対策が議論されてきました。今回の法律改正により、米国の「予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)」のように中長期的な課題設定の下、科学的な知見に基づき、総合的かつ恒常的に評価・検討する組織、つまり日本版ACIPとも考えられる新たな組織が設置されます。厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会がこれに相当します。それにより、社会的・医学的なニーズに基づいて国民的な議論が定期的に行われることが期待されます。またサーベイランスシステムの整備により、導入したワクチンの効果(感染症発症率、発生数の低減)や副反応あるいは紛れ込んできた有害事象などの発生状況傾向が明らかになるとともに、接種時期の妥当性など科学的根拠に基づいた対応が可能になると考えられます。
 今回の『予防接種法』改正により、より科学的な観点で感染症を予防できる時代へ、一歩前進することを期待しています。

『予防接種法』改正を振り返る

Vaccine Topic ワクチンの接種間隔と同時接種 国立病院機構三重病院 院長庵原俊昭先生

生ワクチンは接種後27日間あける?

 日本では生ワクチンを接種した場合、次のワクチン接種まで27日間あけることになっています。生ワクチンの注射では、皮下に接種されたウイルスの増殖によりナチュラルキラー(NK)細胞が活性化し、ウイルスの増殖を抑制するインターフェロン(IFN)が産生されます(図1)。その後、ウイルス特異的なCD8陽性の細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導され、CTLの活性を増強するT helper cell type 1(Th1)系の反応から、次第に抗体産生を刺激するT helper cell type 2(Th2)系の反応へ移行し、免疫応答を獲得します。IFNが産生されている時に別の生ワクチンを接種しても、そのワクチンウイルスはIFNによって増殖が抑制されるため(干渉作用)、免疫応答が獲得できない場合があります。注射生ワクチンの接種間隔は、このような生体の免疫応答獲得プロセスに基づいて定められています。
 また27日間の接種間隔は、何らかの副反応が現れた場合、どのワクチンによるものかを判別できるように、観察期間も兼ねています。
 しかし同じ生ワクチンでも経口生ワクチンに関しては、腸管でワクチンウイルスが増えるので、別のワクチンを接種しても問題ないと言われています。米国では経口生ワクチンの投与方法に関して原則接種間隔の制限はありませんが、日本では副反応観察期間の観点から注射生ワクチンと同様に、接種後27日間あけることになっています。

不活化ワクチンは接種後6日間あける?

 日本では不活化ワクチンを接種した場合、次のワクチン接種まで6日間あけることになっています。これには、特に免疫学的な理由があるわけではありません。不活化ワクチンの副反応は接種1~2日後に現れることが多く、観察期間として接種間隔が設けられたのです。
 日本では、予防接種によって万が一大きな健康被害が生じた場合、接種との因果関係が認められれば医療費などが支払われる「予防接種健康被害救済制度」があります。ワクチンの接種間隔は、副反応が強く出てしまった方を救済しやすくするために設けられた側面もあります。しかし昨今、同時接種が推奨されるようになり、この接種間隔の設定の意味合いは薄くなってきたように思われます。
  2012年9月、日本小児科学会はワクチンの接種間隔変更に関する要望書を厚生労働省に提出しました。その内容は、注射生ワクチン同士は干渉作用を避けるため、同時接種でない場合はこれまで通り27日間の接種間隔をあけることを継続し、それ以外のワクチンに関しては接種間隔を設ける科学的理由がないとして、接種間隔を設けないよう求めるものです。今後のワクチン接種間隔をめぐる動きが注目されます。

定期接種の場合に適用。任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法が適用される。

同時接種は副反応を増やす?

 ワクチンの同時接種で問題になるのは「免疫原性」、「安全性」、「利便性」の3つです。
 「免疫原性」に関しては、我々の身体は自然の状態ですでに複数の病原体に暴露されており、その状況に応じて免疫応答しています。また我々は、これまでのワクチンで最も抗原量の多い天然痘の生ワクチンを接種することによって免疫を獲得し、天然痘を撲滅してきました。したがって、生ワクチンより比較的抗原量が少ない不活化ワクチンを同時接種しても人間の免疫系は十分に対応可能と考えられます。
 次に「安全性」に関してですが、生ワクチンでは接種1~3週間後に発熱や本来の感染症と類似した症状が現れることがあります。これはワクチンウイルスが増殖しているためであり、同時接種では問題にならないと考えられます。一方、不活化ワクチンでは接種後すぐに自然免疫が働き、発赤や腫脹、熱感などが現れます。熱感が全身に現れれば発熱になります。理論上は、同時接種によって抗原量が多くなれば自然免疫も強く反応するのでこうした副反応も出やすくなります。しかし、副反応の発生率は相加的ではあっても相乗的ではないと言われています。そして一般的に副反応が出るということは、それだけ獲得免疫も成立しやすいということの裏返しでもあります。例えば副反応の発熱率を低下させたワクチンでは、それだけ抗体の獲得率も低下してしまいます。問題は、同時接種による発熱などの発生率を容認できるかという点になるでしょう。
 「利便性」に関しては、少ない回数で予防接種が済んだほうが保護者にとってもよいと思われがちです。しかし、中には何回も予防接種に来た方が、かかりつけの先生に色々なことを質問できるからよいと考える方もいらっしゃるので、保護者の考えや希望を考慮して接種スケジュールを立てることが重要です。
 欧米では同時接種が早くから行われてきましたが、その背景にはワクチンの種類の増加があります。接種すべきワクチンが多くあるなかで、ワクチン接種のコンプライアンス低下を防ぐため、同時接種が開始されました。そして同時接種の安全性を少しずつ確認しながら、現在のような同時接種が行われるようになりました。なお日本では、市区町村によっては決められた時期にワクチンを受けなければ接種費用の助成が受けられないところもあり、ワクチンの同時接種を行っていくことは現実的と考えられます。

まとめ

ワクチンで予防できる病気を最大限予防するためには、守るべき原則があります。まず、その病気が流行する、かかりやすくなる前に接種することです。次に、ワクチンは副反応が起こりやすい月齢があるのでその月齢を避けて接種すること、そして、適切な免疫応答が得られる時期に、必要な回数接種することです。ワクチン接種のスケジュールは、子供の月齢や保護者が希望するワクチンの数によってそれぞれ異なりますが、最も重要なことは、原則に沿いつつ、保護者の希望するスケジュールを考慮することです。保護者と相談しながら決めたスケジュールであっても、子供が体調を崩すなどでずれることはよくあります。そうした時に、保護者の希望を聞きながら、いかに対応していくかが重要になるのです。

日常診療Q&A ヒブワクチンの接種について 千葉大学医学部附属病院 感染症管理治療部 石和田稔彦先生

Q 細菌性髄膜炎を予防するワクチンが国内で発売されましたが、その効果は確認されているのでしょうか。

A:小児の細菌性髄膜炎を引き起こす原因としてもっとも多いのが、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、次に多いのが肺炎球菌です。千葉県では1980年代から疫学調査を行っていますが、ヒブワクチンが導入された2008年の前後では、細菌性髄膜炎の患者数減少はみられませんでした。その理由は、ワクチン導入直後の接種率が高くなかったからです。その後、2011年2月から千葉県でヒブワクチン・小児用肺炎球菌の公費助成が開始され、5歳未満であれば無料で接種できるようになりました。この公費助成が開始された2011年から5歳未満の細菌性髄膜炎患者数の大幅な減少が認められ、2010年に30例あった報告が、2011年は3例と10分の1にまで減少しました。同様の傾向が、全国10道県における調査でも認められています(図1)。つまりヒブワクチン・小児用肺炎球菌の予防効果は、導入直後でなく、公費助成などによって接種率が向上したことで発揮されたことが確認されています。

Q ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの同時接種に端を発した死亡例について、因果関係はないと判断されましたが、その後の調査でわかったことはありますか。

A:2011年3月頃、ワクチン接種後にお子さんが亡くなる事例が立て続けに生じ、接種が中止されました。ワクチンの同時接種が原因ではないかとされましたが、詳しい調査の結果、ワクチン接種と死亡の因果関係は認められず、同年4月に接種が再開されました。その後もワクチン接種後に亡くなった事例について因果関係の調査は行われていますが、ワクチン接種または同時接種との因果関係が認められたケースはありません。
亡くなられたお子さんのほとんどが乳児であり、乳幼児突然死症候群(SIDS)で突然亡くなったケースも含まれるのではないかと考えられています。SIDSの方のワクチン接種歴はわからないことが多く、ワクチン接種とSIDSとの関連も調査が開始されました。強調しておきたいのは、ヒブや肺炎球菌による細菌性髄膜炎は、重症化、劇症化することもあり、それが直接的な原因で亡くなる方がいらっしゃるということです。因果関係は証明されていないがワクチン接種後に亡くなった方の割合は、日本も海外も同程度であり、そのことが不安であるという理由で、接種を控えることはしないでいただきたいと思います。

Q ワクチンの同時接種について、国内で安全性に関する研究はされているのでしょうか。安全性について心配される保護者の方にどのように説明すればよいでしょうか。

A:鹿児島県で、ヒブ、小児用肺炎球菌、および三種混合ワクチンを含めた同時接種について大規模な前向き調査が行われています。この調査では単独接種と比較して2種類、あるいは3種類の同時接種による有害事象や副反応の有意な増加は認められていません。他にも、ヒブワクチンと三種混合ワクチンの同時接種について、製造販売後臨床試験の結果2が論文化されていますし、日本外来小児科学会でも全国的な安全性の調査を行っています。
 安全性について懸念される保護者の方には、「私たちは日常的に複数の菌やウイルスに暴露されており、2~3種類のワクチンを同時接種することは、そうした日常とあまり変わりない」ということを説明します。また乳児は感染症にいつ罹患するかわかりません。風邪をひくことも多いので、接種可能な時に数種類の免疫をつける方が効率よく感染症から守ることができます。どうしても同時接種が不安な保護者の方には、まず2種類の同時接種を行い、大丈夫だったら次に3種類と、徐々に接種数を増やす方法をとることもあります。大切なのは、保護者の意見を尊重し、相談しながら進めていくことです。

Q 生後2ヵ月から始まるワクチンにロタウイルスワクチンが加わりましたが、ヒブワクチンとの同時接種はできるのでしょうか。

A:ロタウイルスワクチンは、ヒブワクチンをはじめ日本で使用される他のワクチンと同時接種が可能です。ただし生ワクチンですので、接種後は27日あけなければ次のワクチンを接種できません。ロタウイルスワクチンは生後24週までに2回、または32週までに3回と早期に接種を完了することが必要です。このようにロタウイルスワクチンは接種可能な期間が短いので、ヒブワクチンや他のワクチンと同時接種した方がワクチン接種スケジュールも組みやすくなると思います。

Q ヒブワクチンの追加免疫の時期について、添付文書では「初回免疫後おおむね1年」、厚生労働省の通知では「初回免疫後7~13ヵ月」と異なりますが、どのように解釈すればよいのでしょうか。

A:追加免疫はブースター効果を得るため、初回免疫から6ヵ月程度期間をおいて接種することが大切です。添付文書にあるように、初回免疫から1年間あけなければならないかというと、確固としたエビデンスがあるわけでもありません。またヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンでは添付文書上の追加免疫の時期が異なるため、細菌性髄膜炎予防をセットで行いたい小児科医の現場を混乱させていました。そのため我々は厚生労働省に対してヒブワクチン追加免疫時期の緩和を求めていました。その結果ヒブワクチンの追加免疫の時期に関して「初回免疫後7~13ヵ月」と全国に通知されることになりました。7ヵ月から追加免疫が可能になったことで、ワクチン接種スケジュールも組みやすくなったと思います。またヒブワクチンの追加免疫前に細菌性髄膜炎を発症するケースも少数ながら報告されています。できれば1歳を過ぎて早めの時期に追加免疫をしていただきたいと思います。

Q 2~5歳未満の児に対するヒブワクチン接種の必要性について教えてください。

A:2007~2009年の調査で、ヒブによる全身感染症は0~1歳児が多く約75%を占め、残りの20数%を2~4歳児が占めていました3。しかしヒブワクチンが導入され、0歳児に積極的に接種されるようになってから、ヒブによる細菌性髄膜炎患者は、年齢が少し高めで、ワクチン未接種の児での報告が目立ってきています。ワクチン接種が可能な5歳未満のお子さんには積極的にヒブワクチンを接種していただきたいと思います。
接種回数に関しては、0歳児と2歳以上の児では免疫系の成熟度も異なりますので、1回の接種でも十分と考えます。重要なのは、ワクチンの接種率を上げてヒブの蔓延を抑制することです。細菌性髄膜炎を予防するために、ぜひヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの両方を接種していただきたいと思います。

スペシャリスト Pick Up ワクチン接種への理解を深めるコミュニケーションの重要性 埼玉県小児保健協会 会長医療法人自然堂 峯小児科 峯眞人先生

ワクチン接種についてのコミュニケーションはとても重要!

 日本では最近、接種できるワクチンの種類が増えました。それに伴い、予防接種法や接種費用の助成制度、推奨されるワクチンスケジュールも変化しています。ワクチンで予防できる病気を防ぐためには、初めて赤ちゃんを産んだお母さんや、ワクチンの種類が増える前に予防接種を経験した子どものお母さんを対象に、ワクチン接種に関する最新の情報を、根気よく繰り返し伝えていくコミュニケーションがとても重要だと考えます。

最初のコミュニケーション対象は産後すぐのお母さん

 タイミングを逃さず接種を行っていくために、生後2ヵ月からのワクチン接種開始が推奨されています。従来、この時期の赤ちゃんは病気にかかりにくいため、生後3ヵ月健診などで初めて小児科医を受診することが多かったのですが、今はその前に、ワクチン接種を目的に来院していただかなければならない時代です。
 そのためには、産婦人科で、生後早期から開始するワクチンの存在と、ワクチンを接種するために小児科医を早く受診することの必要性を伝えていただくことが大切です。

早期のワクチン接種を促すには社会全体での取り組みが必要

 小児科だけでは対応できないコミュニケーションを図るための具体策として、産科の先生方にもワクチンの重要性を理解してもらうとともに、勉強会などを通じて助産師さんや産科の受付スタッフの協力を得ていく活動を行っています。
 また行政サイドからの取り組みも重要です。さいたま市では、定期接種や市の補助が受けられる予防接種について、赤ちゃんが生後1ヵ月になった頃に各家庭にお知らせが届きます。そのお知らせには、ワクチンの種類別、回数別の予診票が同封されています。保護者の方は、このお知らせにより受けられるワクチンの種類と必要回数を知ることができ、予診票に必要事項を記入して小児科に持参すればワクチン接種が受けられるシステムです。地域によって方法は違うでしょうが、行政からの働きかけはとても有効です。行政に対して小児科医から提案を行っていくことも必要です。
 さらに我々は、埼玉県の子供たちを病気から守るために「彩の国予防接種推進協議会」を組織しています。この協議会には、小児科医を中心に産婦人科、内科、耳鼻科の医師、コメディカルの方々や保育園の保育士さん、行政の方など多職種が参加し、適切な予防接種の推進に向けて地域だからこそできる有効な施策の実行につなげています。

ワクチン接種への理解を深めるコミュニケーション

 ワクチン接種は、健康状態のよい赤ちゃんに行う予防医療です。赤ちゃんに痛い思いをさせた上に副反応の出る可能性が少しでもある限り、保護者の理解の上に行うことは必須です。接種に不安を持つ方もいらっしゃるので、ワクチンのメリットに目を向けてもらうコミュニケーションも大切です。
 当院では、日本外来小児科学会などが発行したパンフレットを使って、ワクチンで予防できる病気、重症化した時の問題と予防の意義について説明しています。またスタッフ用の予防接種の問い合わせや予約などに対応するマニュアルを準備するとともに、月1回のスタッフミーティングでもワクチンの情報を共有しています。このマニュアルにより電話予約時、来院受付時、接種当日の流れの中などいつどのような形で問い合わせを受けても、一定以上のレベルで統一された情報を提供することができます。
 最後まで接種を迷われる方には、医師が直接ワクチン接種の意義を伝えます。接種した本人が病気にかからないという個人防衛の面だけでなく、できるだけたくさんの赤ちゃんがワクチン接種を受けることによって、なんらかの事情でワクチン接種を受けられない子供が病気にかかるのを防げることを伝えます。社会全体で子どもを守っていくことの大切さを理解してもらうことが重要と考えています。

特別記事 アルフレッサ株式会社常務執行役員 営業本部長 遠藤俊二氏に聞く

ワクチンの品質保証と安定供給に向けた取り組み

ワクチンの品質を保つための工夫

 Cold Chainで流通するワクチンの品質管理で重要なことは、保管時と流通時の温度管理です。当社の物流センターや営業拠点で保管されるワクチンは、4~5℃に温度管理された保冷庫で保管され、管理薬剤師が毎日温度をチェックしています。夜間・休日に温度異常が発生した場合には、自動的に関係者に連絡され、迅速な対応を行います。物流センターの保冷庫には自家発電装置が設置されており、停電しても電力が供給され、庫内温度が維持される仕組みです。輸送時には専用ボックスにて温度管理を行い、品質を保った状態で医療機関にお届けしています。
 ワクチンの温度管理についての社内勉強会を定期的に実施して社員の意識付けを行うとともに、Cold Chainでの流通高度化に向けた研究や技術導入も積極的に行っています。

安定供給のために大切な適正在庫の維持

 ワクチンの安定供給には、適正在庫の維持が大切です。適正在庫は、過去のワクチンの消費実績や販売見込みから、ワクチンごとの需要を予測し、メーカー側の供給量を踏まえた上で、決定しています。ワクチンの需要は随時変化するため、毎日適正在庫の見直しを行っています。適正在庫の維持には、医療機関での使用状況や在庫を把握することも重要です。そのため、当社の営業担当者(MS)が先生方からワクチン接種の予約状況をお聞かせいただいております。またある時期に需要が集中するワクチン(インフルエンザワクチン、MRワクチン等)については、医療機関ごとの偏りが生じないよう、納品数の調整をお願いすることもあります。先生方には、過剰な在庫を持たれないよう、必要な時に必要な本数を依頼してくださるようご協力をお願いします。
 適正在庫の維持に関連して、現在メーカーからのワクチン供給は、通常の医薬品供給より頻度が少ないという問題があります。将来的に供給頻度を見直していただくよう働きかけていきたいと考えています。
 もう一つ重要なのは、緊急時の対応です。一般医薬品と同様に、定期出荷とは別のルートで緊急配送売上により出荷処理されます。Cold Chainであっても、在庫を持つ営業拠点が営業エリア内に120ヵ所ほどあり、速やかな配送ができる体制を整えております。

予防医療の普及に貢献するために

 近年、わが国では積極的なワクチン開発が推進されており、ワクチンに対する国民の注目度は高まってきています。当社にとってもワクチンは大きなビジネスチャンスです。定期的な社内勉強会や、営業拠点ごとの勉強会を行って知識の向上に努めています。
 メーカーのワクチン専門MRと連携した医療機関への情報提供はもちろんですが、接種率向上のための啓発活動にも積極的に関わる時期に来ていると考えます。一般医薬品の納入を通じて日々お目にかかっている先生方に、新しいワクチンの接種情報や、地域ごとのワクチン接種事業などの情報もお届けしていくことで、ワクチンによる予防医療の普及に貢献できればと考えています。