施設事例紹介 その①

院内感染予防と待ち時間軽減のために、健診だけでなく診察や予防接種も予約制を採用している福岡県の下村小児科医院。子どもの健康を守るために毎月勉強会を開催し、情報やアイディアを共有するクリニック一丸となった取り組みを紹介します。

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医師とスタッフによる情報・アイデアの共有と徹底した確認システムで予防接種に取り組む

月1回全員参加の勉強会を実施

院長 下村国寿 先生下村: 当院では月に1回1時間程度、スタッフ全員で勉強会を行っています。この勉強会は、私、副院長、看護師5人、受付スタッフ4人、病児保育スタッフ2人と、当院の全スタッフがそろう昼休みの時間を利用して実施しており、最初に私が30分間ほど話した後、スタッフから挙げられた改善点について全員でディスカッションしています。
 私からは学会で得た最新の情報や、保護者に説明するときのポイント、予防接種に関してはワクチンの接種方法やスケジュールに変更があった場合にはその概要を解説することもあります。ワクチンについては電話予約時などスタッフからも説明するので、スタッフ全員がしっかり理解しておくことは重要と考えています。
 後半のディスカッションでは、日々の業務や院内設備についての改善点をスタッフから挙げてもらい、話し合います。ここで挙げられる改善点は、スタッフに1人1冊ずつ渡している「アイデアノート」に、日々仕事をしながら気づいたことや疑問点、改善すべき点をスタッフが書き留めたものです。毎日ただ決められた業務を行うだけでなく、疑問点・改善点などを考えながら行うことにより進歩が生まれると私は考えています。受付や棚をきれいにする、パンフレットの置き場所を変える、子どもへの危険性を考慮して設備の「角」を補修するなど、患者さんにとって安心できる場所になるよう院内設備の改善についても話し合い、取り組んでいます。予防接種に関することでは、効率よく接種するための順序やスケジュール、接種部位の統一、予防接種外来での段取り、接種もれの防止策などを、この勉強会を通して話し合い、決めてきました。
 勉強会とは別にスタッフだけで行うミーティングもあり、スタッフだけで話し合ったほうがいいことなどは、このミーティングで解決策を検討しています。

予防接種専門外来で効率よく安全に接種

下村:ワクチン接種は、一般診療とは別に設けている予防接種専門外来で主に行っています。時間帯は毎週木曜日の13時頃~15時です。希望によって一般診療の時間帯にも予防接種を行っていますが、特に乳幼児の場合は院内感染予防の観点から感染症の患者さんと接触のない専門外来での接種を推奨しています。接種の予約は、希望日の前日に電話で受け付けています。接種希望日の前日よりも前に電話を受けた場合には、乳幼児は急に体調が変化することも多いため、「前日に体調がよく、『明日受けられそうだな』と思ったら電話で予約してください」とお伝えしています。
 また、当院では複数のスタッフで確実かつスムーズなワクチン接種に努めています。
事務 佐賀里真弓さん佐賀里:まず、予約時には電話を受けた際に保護者に母子手帳を開いてもらい、子どもの月齢と該当ワクチンの接種可能時期などを確認します。また、ロタウイルスワクチンなど接種時期が厳密に定められているワクチンもあるため、電子カルテで接種可能時期と接種間隔がきちんとあいているかについても確認します。
 当日はさらに複数のスタッフでワクチン接種に臨みます(図1)。最初に待合室で住所の確認を行いますが、定期接種のワクチンは住民票のある市町村で受けることになっているため、市外や県外に住んでいないか、引っ越しをしていないかなど確認することも重要です。同時接種の場合にはスタッフ全員がわかるよう、接種する順にワクチン名を書いた付箋を母子手帳に貼りつけます。また、接種部位を予診票に書き入れます。このように複数の工程を踏むことで結果的に何度もチェックを行うことになり、誤接種の中でも多くみられる「接種間隔の間違い」、「ワクチンの取り違え」などを防ぐことができています。
 次回のワクチン接種については、定期接種ですぐ来院する場合は口頭で保護者に伝え、しばらく間が空く場合には保護者が接種時期を忘れないように、母子手帳に付箋を貼ってお返ししています。

任意接種の意義や副反応もきちんと説明

佐賀里:電話予約の際には、任意接種ワクチンの接種も提案します。最近ではほとんどの保護者が任意接種ワクチンについても既に知っているので、接種回数などを説明しています。なかには接種を迷われる保護者もいらっしゃいます。そのようなときには、私のほうからもワクチン接種のメリットを説明するようにしています。例えばロタウイルス胃腸炎の場合は、「発症すると点滴になることもあるので受けたほうがいいですよ」など説明してお勧めしています。それでもまだ迷われる方には、定期接種ワクチンの接種日に医師から説明します。
 副反応については、基本的に口頭で説明しますが、ロタウイルスワクチンやBCGなどの場合には、冊子などの資材を用いて疾患の話を交えながら詳しく説明します。
 また、母子手帳で接種もれがないか確認する際に、母親の風疹の抗体価を確認し、低い場合はリスクやワクチン接種のメリットを説明した上で、MRワクチンの接種を勧めています。

チーム一丸となって続ける取り組み

下村:予防接種外来の取り組みは医師だけの力では成り立ちません。限られた時間の中で多くの接種希望者に、安全・確実に、効率よくワクチンを接種するためには、スタッフの力が不可欠です。スタッフひとりひとりが、それぞれの役割をプロフェッショナルに全うし、誤接種や接種もれを防ぐために段取りよく何重ものチェックをしてくれるおかげで、私は、接種や保護者への説明といったコアとなる業務に集中できると思っています。
 自らの役割と責任をしっかり果たしてくれるスタッフとともに、これからもチーム一丸となって予防接種業務に取り組んでいきたいと考えています。