検診の現状

わが国では、地域住民検診として20歳以上の女性を対象に、2年に一度の子宮がん検診を実施することが推奨されています。

わが国における子宮がん検診は1960年代から行われ始め、1983年に施行された老人保健法により国の事業として推進され、全国的に普及しました。以前は住民検診として、30歳以上の女性を対象に年1回の頻度で実施されていましたが、最近の20~30歳代における子宮頸癌の増加を踏まえて、2004年から検診対象年齢が20歳以上と改正されました(表)*1

表:国が定めているがん検診
表:国が定めているがん検診厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の一部改正について(平成16年4月)より

がん検診の実施体制は様々であり、各地方自治体(市区町村)が行う住民検診の他にも、職場の法定健診に付加して行われるがん検診や、医療機関が提供する保険医療サービスとしての検診があります。また、検診費用には健康保険は適用されず、自己負担額は検診施行の主体によって異なります。

住民検診

各地方自治体が住民を対象に実施している公的検診で、自治体のがん検診担当課が窓口となり、保健所などの公的施設や、自治体から委託された医療機関で実施されます。ただし、対象となる年齢、実施時期や検査を行う場所、費用負担は各自治体により異なることがあります。

職場の法定健診

企業が従業員とその配偶者を対象に実施している健康診断です。企業の健康保険組合が費用の一部を負担していることが多いものの、費用援助の方針は健康保険組合により異なります。

任意の検診

人間ドックや医療機関などにおいて個人の判断で受ける検診で、費用は全額自己負担となります。ただし、一次検診で異常が発見された場合、それ以降の検査や治療は保険診療となります。

子宮頸癌の死亡率は、1970年までは漸減していましたが、その後はほぼ横ばいが続いています。

子宮頸癌の死亡率は、以前は胃癌に次いで第2位でしたが、がん検診の普及に伴って減少しました。厚生労働省(当時厚生省)の子宮頸がん検診の有効性評価に関する研究(平成10年3月)においても、「30歳以上の女性を対象とした細胞診による子宮頸がん検診の死亡率減少効果を示す、十分な証拠がある」と報告されています。しかし最近では、子宮頸癌死亡率はほぼ横ばいが続いており、減少が止まっています(図)。その原因はいくつか考えられますが、そのうちの一つとしてがん検診受診率の低さが挙げられます。

図:わが国の子宮頸がん死亡率の推移(1958~2006年)
図:わが国の子宮頸がん死亡率の推移(1958~2006年)人口動態統計によるがん死亡データから作図

わが国の検診受診率は海外と比べて低く、20歳代の受診率がとくに低いのが現状です。

わが国におけるがん検診受診率は10~30%に留まっており、諸外国に比べて低い*2ことが問題となっています。最近のがん検診受診率の推移(図)をみると、子宮がん検診の受診率はほぼ横ばい状態です。

※がん検診受診率
わが国の代表値となるデータは2つあります。 1つは地域保健・老人保健事業報告で、全国の保健所および市区町村におけるがん検診の対象者、受診者、結果の内訳について毎年集計したものです。 もう1つは、全国から無作為に選ばれた世帯を対象とした国民生活基礎調査における3年ごとの大規模調査で、個人にがん検診受診の有無を質問したものです。これらによると、子宮がん検診受診率は、平成18年度地域保健・老人保健事業報告では18.6% 、平成16年度国民生活基礎調査に基づいた計算では20.8%*3とされています。
図:がん検診受診率(1994~2006年)
図:がん検診受診率(1994~2006年)平成18年度地域保健・老人保健事業報告
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/06/r8.html
注:
「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の改正に伴い、平成17年度(2005年)から受診率の算出方法が変更されたため、2005年の受診率が上昇しています。
2004年まで:
受診率=(受診者数/対象者数)×100
2005年以降:
受診率=(前年度の受診者数+当該年度の受診者数-2年連続の受診者数)/(当該年度の対象者数)×100

とくに、20歳代前半における子宮がん検診の受診率が5%にも満たず、非常に低い(図)ことは大きな問題です。なぜなら、がん検診の目的は癌死亡率の減少にありますが、子宮頸癌に関しては、前癌病変の段階で早期に発見し、浸潤癌への進行を予防することも重要な目的だからです。とくに若年女性では子宮温存治療を希望する場合が多く、また子宮温存のニーズは、晩婚化や高齢出産の増加とともにますます高まっています。 アメリカにおける子宮頸癌患者の半数は検診を受けたことがない女性ですが、日本ではその割合が75%にも及びます*1。したがって、若い女性、とくに性交経験のある場合は、積極的に子宮頸部細胞診を行うべきであると考えられます。ただし、若年女性ではHPVの感染率が高いため、いたずらに不安をあおらないよう、HPV感染に関する正しい知識と定期的な子宮頸がん検診受診の必要性を啓発することが大切です。

図:年齢階級別がん検診率(女性)
図:年齢階級別がん検診率(女性)平成16年国民生活基礎調査から推計(健康票第2巻第34表/健康票第4巻第16表)
【出典元】
  1. *1厚生労働省老健局:老人保健事業に基づく乳癌検診及び子宮がん検診の見直しについて.:がん検診に関する検討会中間報告. 2004
  2. *2祖父江友孝:がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究. 厚生労働省がん研究助成金による研究報告集 平成17年度:38-42, 2006
  3. *3平成16年度国民生活基礎調査から推計(健康票第2巻第44表の「がん検診受診状況」/健康票第2巻34表の「総数」)(対象年齢)
  4. *4今野良ほか:診断と治療93(9):1575-1582, 2005
子宮頸癌の早期発見のために