HPVとは何か

ヒトパピローマウイルス(HPV)はパピローマウイルス科のパピローマウイルス属のウイルスで、大きさが50~55nmのDNAウイルスです。

HPVは世界中どこにでも存在するごく一般的なウイルスで、ヒトの皮膚や粘膜に感染します。大きさは50~55nmで、エンベロープ(外被)を持たず、正二十面体のカプシド(DNAを含んでいる部分)で覆われています。ヒトに感染するタイプは100種類以上が確認されており、皮膚を好んで感染するタイプと粘膜を好んで感染するタイプに大別できます。主に粘膜に感染するタイプのうち15種類ほどが子宮頸癌などの発癌に関係する発癌性HPV(ハイリスクタイプのHPV)と呼ばれています*1

図:ヒトパピローマウイルス(HPV)
図:ヒトパピローマウイルス(HPV)

HPVは、エンベロープを持たない二本鎖環状DNAを持つウイルスで、HPVのキャプシド(ウイルスを形づくるタンパク質の殻のうち、遺伝物質を含んでいる部分)は直径50~55nmの正二十面体です。キャプシドの基本骨格は、キャプソメアとよばれるタンパク質の粒子(L1タンパク質の五量体からなる)が72個集合して形成され、そこにL2タンパク質が組み込まれています。

イラスト提供:GSK Vaccines

十数種が知られている発癌性HPVは誰にでも感染する可能性がありますが、子宮頸癌を発症するのはそのごく一部の例です。

子宮頸部における発癌性HPVの主な感染部位は扁平上皮の基底層です。表皮および中層の細胞にウイルスが侵入しても、ここでは細胞分裂がほとんど起こっていないため、感染は成立しません。また、発癌性HPVが基底層に感染しても、やがて粘膜組織の新陳代謝とともに細胞が剥離してしまいます。そのため、通常はHPVウイルスは体外に排出されて感染は持続せず、容易には子宮頸癌にまで進行しません。さらにヒトの場合、発癌性HPVの感染のみでは正常細胞から癌細胞への変化は生じず、宿主側の様々な因子も子宮頸癌の発症に必要とされることがわかっています。
つまり、発癌性HPV感染の多くは一過性に終わりますが、ごく一部では感染が持続し、それに宿主側の因子が絡み合って初めて子宮頸癌に進展するのです。
世界保健機関(WHO)によると、全世界において年間3億人から子宮頸部へのHPV感染がみつかるものの、そのうち子宮頸癌を発症するのは45万人と推定されています(図)*2。これはHPV感染者のわずか0.15%に過ぎません。

図:HPV感染と子宮頸部病変の発生割合
図:HPV感染と子宮頸部病変の発生割合川名敬ほか:化学療法の領域 22(10):1521-1528, 2006
【出典元】
  1. *1International Agency for Research on Cancer:Human papillomaviruses. Lyon, 2006
    (IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Volume 90)
  2. *2川名敬ほか:化学療法の領域 22(10):1521-1528, 2006
子宮頸癌とヒトパピローマウイルス(HPV)