百日せき

百日せきとは

百日せきは特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症です。母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が期待できないため、乳児期早期から罹患します。1歳未満の乳児(特に生後6か月以下)が死に至る危険性が高い疾患です。一年を通じて発生がみられますが、春から夏、秋にかけての発生が比較的多いといえます。

疫学

わが国の百日せき患者の届け出数は、ワクチン導入前の1947年には10万例以上で、その約10%が死亡していました。1948年に百日せきワクチンが導入され、ワクチンの普及とともに百日せき患者は激減しました。しかし、現行ワクチンの免疫持続期間は4~12年とされ、多くの先進国で青年・成人患者の増加が認められています。わが国でも2002年以降小児科定点から報告される成人患者数が急増しており、2007年には複数の大学で大規模な集団感染事例が発生しました。2000年の患者年齢は0歳が半数を占めていましたが、2008年には20歳以上の成人が全体の1/3を超え、2010年は全体のほぼ半数を占めるまでになりました。

感染症発生動向調査
百日咳の年別・年齢群別割合(2000~2012年)

感染経路・臨床症状・治療

百日せきの主な原因菌は百日せき菌で、ヒトの気道上皮に感染することにより乾性咳嗽や発作性の咳を引き起こします。
百日せきの潜伏期間は通常7~10日であり、発症から回復までに数週間以上を必要とします。病期によりカタル期(感冒症状、1~2週間)、痙咳期(乾性咳嗽と発作性の咳、3~6週間)、回復期(6週間以降)に分けられます。アデノウイルス、マイコプラズマ、クラミジアなどの呼吸器感染症でも同様の発作性の咳嗽を示すことがあり、鑑別診断上注意が必要な疾患です。
成人の百日せきでは咳が長期にわたって持続しますが、典型的な発作性の咳嗽を示すことが少なく、軽症で診断が見のがされやすいといえます。しかし、菌の排出はあるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源となる危険性があります。
治療にはマクロライド系抗菌薬が用いられ、投与開始後5日以内に陰性となることが多いとされています。乾性咳嗽が激しくなる痙咳期には咳の改善は期待できませんが、二次感染防止目的として抗菌薬投与が行われます。

疾患について