ポリオ

急性灰白髄炎(ポリオ)とは

ポリオはポリオウイルスの中枢神経系への感染により、急性の麻痺が引き起こされる疾患です。抗原型により3種類の血清型(1型、2型、3型)がありますが、症状の差異はありません。自然宿主はヒトのみで、脊髄性小児麻痺と呼ばれることもあります。

疫学

ポリオは1950年代まではしばしば世界各地で流行しましたが、1950年代にJ.Salk博士により不活化ポリオワクチン(IPV)が、次いでA.Sabin博士により経口生ポリオワクチン(OPV)が開発されました。これらのワクチンが各国で定期接種化されたことにより、ポリオ患者は激減しました。
わが国では1940年代頃から全国各地で流行がみられ、1960年には北海道を中心に5,000名以上が罹患する流行となりました。そのため1961年にOPVを緊急輸入し、小児を対象に一斉に投与することによって流行は急速に終息しました。1964年から国産OPVの2回投与による定期接種が開始された結果、1980年の1型の症例を最後に、わが国で野生型ポリオウイルスによるポリオ麻痺症例はみられなくなりました。その後、報告されているのは全てワクチン株由来の症例(vaccine-associated paralytic poliomyelitis / VAPP)です。
世界でも、ポリオ患者の減少に伴い、OPVの副反応としてVAPPが問題視されるようになり、欧米では予算確保が可能な場合はIPVを用いる国が多くなりました。ようやく日本でも2012年9月より、神経病原性の復帰がないIPVが定期接種化に組み込まれ、現在に至っています。

ポリオ届出患者数

ポリオ根絶計画

世界保健機関(World Health Organization; WHO)を中心に、世界的に「ポリオ根絶計画」が進められています。
日本が所属するWHO西太平洋地域(WPR)は、1997年のカンボジアの症例を最後にポリオ患者がみられなくなりました。その結果、2000年10月の京都会議で、WPRのポリオ根絶が宣言されています。
世界では、1994年にアメリカ地域、2001年にヨーロッパ地域で根絶宣言が宣言されましたが、アフガニスタン、パキスタンの2か国でいまだに野生株のポリオウイルスが流行しています。
WHOでは2018年までの撲滅を目指しており、OPVのみを接種している国では、2015年までに定期予防接種(RI)プログラムにIPVの1回以上の接種を組み込むことが推奨されています。また、3価OPVからVAPPの原因とされている2型を除いた2価OPVへの切り替えも計画されています。

感染経路・臨床症状・治療

ポリオウイルスの感染経路は糞口感染症および経口飛沫感染症です。経口飛沫感染でヒトの体内に入り、咽頭や小腸の粘膜で増殖し、リンパ節を介して血流中に入ります。その後、脊髄を中心とする中枢神経系へ達し、脊髄前角細胞や脳幹の運動神経ニューロンに感染・破壊することによって典型的なポリオ麻痺の症状を呈するようになります。
感染者の90~95%は不顕性に終わり、約5%(4~8%)では発熱、頭痛、咽頭痛、悪心、嘔吐などの感冒様症状で、軽症例はそのまま回復します。1~2%はこれらの症状に引き続き無菌性髄膜炎を起こします。定型的な麻痺型ポリオを発病するのは感染者の0.1~2%で、その場合には6~20日の潜伏期をおき、前駆症状が1~10日続いた後四肢の非対称性の弛緩性麻痺があらわれます。死亡率に関しては、小児では2~5%ですが、成人では15~30%と高くなり、特に妊婦では重症になる傾向があります。
発症後1週間が経過すると、咽頭分泌液にはウイルスはほとんど排泄されなくなりますが、糞便には数週間にわたって排泄されるため、感染源となり得ます。
ポリオには特異的な治療法はなく、対症療法が中心です。呼吸障害や分泌物喀出不全が認められる例では、気管切開、挿管、あるいは補助呼吸が必要となります。

疾患について